北方領土を取り戻すにはロシアを疲弊させるしかない。
- 2013/04/30
- 09:52
ロシア国民は北方領土は日本との真っ当な戦争により獲得した領土だと教えられている。決して終戦直前に突如として日ソ不可侵条約を一方的に破棄して、戦争遂行能力のない日本を蹂躙して終戦後に火事場泥棒のようにして占拠したとはロシア政府は国民に口が裂けても言えない。だからロシア国民の多くは北方領土を日本に返還する意思もなければ必要性もないと考えているのだ。
旧ソ連時代もそうだったが、ロシアは国内経済が悪化すると日本に経済協力を持ちかけ、引き換えに北方領土に対して「話し合おう」と唆すのを常としている。プーチン大統領はロシアで最もロシア的な人物で、国の決まりを破って大統領、首相、大統領と再選を果たしてきた権力亡者だ。そのプーチン氏とどのような話し合いが可能だというのだろうか。
安倍氏のロシア訪問には経済界から100人規模の同行者があり、シベリアの天然ガス開発に日本の商社が動き、シベリアから続く南の北海道数個分に及ぶ広大な荒れ地を農地に開墾するプロジェクトのために農協幹部もノコノコ出掛けているようだ。
ロシアが契約をきっちりと守る国なのか、互恵の原則に基づいて日本と利を分かち合う国なのか、どのように思っているのだろうか。北朝鮮の開城に投資した韓国の工業団地はどうなっているのか、格好の先例がある。
本気で経済協力を行うつもりなら、天然ガス開発を行い、農地開拓事業が進捗するに従って、ロシアの他の地域から入植するのではなく北方領土に暮らしている人たちを移住させる条件を付けるべきだ。そして年次計画を立てて、何年か後には北方領土からロシア人がいなくなり、代わりに日本国民が移住して入れ替わり、北方四島を日本国へ返還するという契約をしっかりと結ぶべきだ。ただなんとなく援助して利益を上げようなぞと簡単に考えないことだ。それは日本国内でこそ有効なのであって、火事場泥棒を働いていささかも恥じない国家を相手には成立しない。
そうした条件を提示して、日本はロシア相手に「賢く」立ち回るべきだ。決して甘い顔をしてはならない。かつて日ソ交渉をした鳩山首相がシベリア抑留を問題化しないと約束して北方領土に対する譲歩を引き出そうとしたが、勝手にシベリア抑留と数万人に及ぶ餓死・凍死者に対する補償もすべて放棄しただけで終わってしまったという苦い経験を忘れてはならない。ロシアを相手にするということはそういうことなのだ。