バグダディ氏殺害で対IS戦争は終ったのか。
- 2019/10/28
- 15:55
<散乱するがれきの上に衣服や血痕、地面には大きく陥没した穴。過激派組織「イスラム国」(IS)最高指導者バグダディ容疑者が殺害されたとされるシリア北西部イドリブ県の現場。イラクのテレビなどが報じた現地からとみられる映像では、周囲には木々が点在するだけで、世界を震撼(しんかん)させ住民を絶望と恐怖に陥れたISのトップが潜んでいたとは思えないような荒野だった。
イドリブ県は、アサド政権に対抗するシリア反体制派最後の牙城。バグダディ容疑者の隠れ家は、トルコ国境に近いバリシャにあった。同県は国際テロ組織アルカイダ系のテロ組織が支配し、ISの活動は多く伝えられておらず、同容疑者がどのように行き着き、いつから身を寄せたかなど謎が多い。米CNNテレビは「生き延びる最後のあがきだったのではないか」という見方を伝えた。
ロイター通信はイラク情報当局者の話として、バグダディ容疑者の居場所は、イラク西部の砂漠地帯で容疑者側近らが拘束された際、併せて見つかった文書で特定されたと報じた。在英のシリア人権監視団によれば、米軍が26日夜にヘリコプター8機などで急襲。潜伏していた建物は、IS支持者らの「聖地」となることを防ぐため爆撃で破壊されたとの情報もある。
一方、米国とIS掃討で共闘しながら、米軍シリア撤収で「見殺しにされた」と反発してきたクルド人主導の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)のマズルム・アブディ司令官は、ツイッターで「米国との共同諜報(ちょうほう)活動の結果、成功した歴史的な作戦」と自賛した>(以上「時事通信」より引用)
いかなる殺人にも正義はない。戦争が国家間の外交手段の一環だとする目のなら、最高指導者を殺害しては話し合いも何も始まらないだろう。
それとも米国はISとは一切話し合いをする必要はなく、ただただ殺し合いを続けるつもりなのだろうか。イスラム国」(IS)最高指導者バグダディ容疑者を殺害したとしても、バグダディ氏の代わりは必ず出て来る。
米国とIS掃討で共闘しながら、米軍シリア撤収で「見殺しにされた」と反発してきたクルド人主導の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)のマズルム・アブディ司令官は、ツイッターで「米国との共同諜報(ちょうほう)活動の結果、成功した歴史的な作戦」と自賛した、というからクルド人が米国憎しのメッセージを発していたのも陽動作戦の一環だったということか。
イドリブ県はアサド政権に対抗するシリア反体制派最後の牙城で、バグダディ容疑者の隠れ家はトルコ国境に近いバリシャにあった、という。同県は国際テロ組織アルカイダ系のテロ組織が支配していたはずだから、ISは反・シリア政権で結びついていたとみるべきではないか。
つまりバグダディ氏の殺害でISを殲滅させたと考えるのは早計で、ISの聖地と呼んでいた拠点を失って、IS兵士たちは中東から世界へ散っていくのではないだろうか。そして最大の標的とするのは指摘するまでもなく米国政府だろう。
バグダディ氏は戦死することによりイスラム教の殉教者となった。ISとの戦争は次のステージに移っただけではないか。軍隊という形を取らないで、テロという市民を標的にした戦争に移らないことだけを願う。